世界が息をのんだ美しさ――
ベルリン国際映画祭 銀熊賞に輝く!!
製作期間10年――悠久の長江、壮大で幻想的な叙事詩。

アジア最長の全長6300キロを誇る長江は、悠久の歴史、文化、大自然を育み、流域に暮らす庶民に豊かな恵みをもたらしてきた。しかし2009年に世界最大の三峡ダムが完成するなど、中国社会の急速な経済発展に伴い、長江も大きな変貌を遂げつつある。
ヤン・チャオ監督が10年の製作期間を費やして完成させた長編第2作『長江 愛の詩』は、極寒の長江とその周辺で60日間のオールロケを敢行し、息をのむほど壮大にして美しい情景を余すところなくカメラに収めた一大叙事詩である。2016年第66回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品されるや、世界的に注目を集める撮影監督リー・ピンビンが手がけた映像美が絶賛を博し、見事に銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。まさにスクリーンで観るべき圧倒的な映画体験を創出した話題作が、ついに日本公開となる。

中国の大河、長江の絶景をカメラに収めた比類なき映像世界

おんぼろ貨物船、広徳号の若き船長ガオ・チュンが、今は亡き父親が遺した手書きの詩集を発見する。違法の仕事を請け負って上海から長江を遡る旅に出発したガオは、「長江図」と題されたその詩集に導かれるようにして、アン・ルーというミステリアスな女性との恋に落ちていく。彼女とガオの父親の間には、いかなる因果関係があるのか。出会いと別れを繰り返すたびにみずみずしく若返っていくアン・ルーは、はたして何者なのか。やがて三峡ダムを越え、長江の水源への航行を続けるガオが、その神秘的な旅の果てにたどり着いた真実とは……。
本作の最大の見どころは、ガオの旅を通して映し出される驚くべき絶景の数々である。下流の商業都市である上海や南京、中流の三峡ダムを経て、雄大な山々がそびえる上流へと移り変わる旅の幻想的な景色は、比類なき映画的スペクタクルを観る者に体感させる。ホウ・シャオシェン、ウォン・カーウァイといった巨匠とのコラボレーションを積み重ね、『春の雪』(05)では行定勲、『空気人形』(09)では是枝裕和、『ノルウェイの森』(10)ではトラン・アン・ユンと組んだ撮影監督リー・ピンビンの独特の感性が、遺憾なく発揮された大作となった。その得も言われぬ詩情に満ちた映像世界に魅了された観客は、あたかも長江の緩やかな流れに身を委ねるような唯一無二の没入感を味わうに違いない。